私たちはプロの清掃業者として、数々のゴミ屋敷を片付けてきましたが、行政代執行の現場は通常の依頼とは全く異なる独特の緊迫感があります。まず、圧倒的な物量が違います。通常の依頼であれば、まだ生活スペースが残っていることも多いのですが、行政代執行に至るような物件は、文字通り天井までゴミが詰まり、玄関のドアを開けることさえ困難なケースがほとんどです。作業員総勢二十名以上、トラックは十台以上という大規模な体制で挑みますが、それでも終わりが見えないほどの廃棄物が積み重なっています。自治体の窓口には、日々近隣住民からの切実な声が寄せられます。「隣のゴミ屋敷をどうにかしてほしい」「異臭で生活ができない」。しかし、私たち行政の担当者が直面している現状は、法と権利の板挟みによる、もどかしいほどの停滞です。代執行の現場には、必ず役所の職員や警察官が立ち会い、一挙手一投足が監視されています。私たちは単にゴミを搬出するだけでなく、その中から契約書類や印鑑、写真、さらには現金などの貴重品を見つけ出すという重要な任務も負っています。ゴミの地層を上から順に剥がしていくと、十年前、二十年前の新聞や雑誌が出てきて、その部屋の時間がどこで止まってしまったのかが分かります。下層に行けば行くほど、水分を吸ったゴミが圧縮され、石のように固くなっていることもあり、人力では到底太刀打ちできないこともあります。また、害虫の発生も凄まじく、防護服を着ていても隙間から侵入してくる不快な生き物たちとの戦いでもあります。行政代執行の現場で最も印象的なのは、ゴミが運び出された後に姿を現す「家の叫び」です。湿気で腐り落ちた床、カビで真っ黒になった壁、そして何十年も日光を浴びていなかった窓。その惨状は、そこに住んでいた人の心の荒廃をそのまま映し出しているようで、作業の手が止まりそうになることもあります。私たちはゴミを片付けますが、それは同時に、一人の人間が背負いきれなくなった重荷を代わりに引き受ける作業でもあります。代執行が終わった後の、空っぽになった部屋に差し込む光は、清々しくもあり、同時に言いようのない切なさを私たちに残します。
特殊清掃業者が目撃した行政代執行の過酷な物量