私が以前住んでいたマンションの隣室が、いわゆるゴミ屋敷であることに気づいたのは、入居してから数ヶ月が経過した頃のことでした。当初、隣から物音が一切聞こえてこないことに、私は防音性が高い物件なのだと満足していました。夜遅くに帰宅しても、隣の生活音に悩まされることなく、静かな環境で読書や睡眠を楽しめていたからです。しかし、その静寂は不自然なものでした。ある夏の日、共有廊下に漂う独特の甘ったるい腐敗臭と、ドアの隙間から覗く大量のレジ袋を見て、私はすべてを察しました。隣の住人は、部屋を天井まで届くほどのゴミで埋め尽くしていたのです。その事実を知ってから、かつて歓迎していたはずの静かさが、急に恐ろしいものに感じられ始めました。ゴミの山が音を吸収しているという知識を得たとき、私は自分の部屋の壁一枚隔てた向こう側に、未知の深淵が広がっているような感覚に陥りました。それからの日々は、匂いへの恐怖とともに、目に見えない音への過敏な反応との戦いでした。ゴミの山が音を遮っているとはいえ、それはあくまで高音域の話です。夜中、何かの拍子にゴミの山が崩れるような、ズズズという低い振動音が壁を伝って聞こえてくるたびに、私は飛び起きました。それは通常の生活音とは異なり、重い何かがじりじりと建物を圧迫しているような、不気味な響きでした。私は自衛のために、ホームセンターで遮音シートや吸音パネルを大量に購入し、隣室と接する壁一面に貼り付けました。本来、防音対策は外部の騒音を防ぐためのものですが、私の場合は、隣にあるゴミの塊が発するかもしれない不気味な沈黙や、そこに潜む害虫の這い回る音から自分を守るための儀式のようになっていました。結局、その静寂に耐えきれなくなり、私は契約期間を待たずに引越しを決めました。ゴミ屋敷がもたらす防音は、安心ではなく、住む者の精神をじわじわと侵食していく不安の塊であったと、今でも強く記憶しています。
隣室がゴミ屋敷だった私の体験記と防音対策に奔走した日々の記録