ゴミ屋敷を形成する心理的要因として、幼少期の家庭環境、特に極度の貧困や物質的な不足を経験したことが挙げられます。子供時代に欲しいものが手に入らなかった、あるいは自分の持ち物を勝手に捨てられたといったトラウマを持つ人は、大人になってから「二度と失いたくない」という強迫的な所有欲に取り憑かれることがあります。心理学ではこれを、剥奪体験による代償行為と呼びます。彼らにとって、物の量はそのまま心の安全保障に直結しています。今使わないものであっても、「いつか必要になった時にないのが怖い」という予期不安が非常に強く、物を手放すことは自分の生命線を断つような恐怖を想起させます。また、貧しさゆえに物を大切にしなさいと過剰に教育された結果、「物を捨てる=悪である」という価値観が固定化され、罪悪感から何一つ捨てられなくなるケースもあります。この心理背景を持つ人々は、ゴミをゴミとして認識していません。それは、自分を守るための備蓄であり、将来への不安に対する防波堤なのです。たとえ賞味期限が切れた食品や、ボロボロになった衣類であっても、それがあるという事実だけで、幼少期の飢えや惨めな記憶から遠ざかることができるのです。このような執着心は、非常に根深く、理屈での説得はほとんど効果がありません。まずは、現在は安全であり、物がなくても生きていけるという実感を、現在の生活の中でじっくりと育てていく必要があります。心理的なアプローチとしては、過去の欠乏感を癒やし、内なる子供(インナーチャイルド)を安心させてあげることが重要です。ゴミ屋敷化は、かつて飢えていた自分を守るための、遅すぎた抵抗なのかもしれません。その心理を理解することは、住人が抱える生存への不安に共感することから始まります。溜め込まれた物は、かつての自分が切望していた安心感の代替品なのです。それを優しく解きほぐすには、長い時間と、現在の豊かさを信頼できるだけの心の余裕が必要になります。