私の家の隣にある、通称「緑の要塞」と呼ばれていた家に行政代執行が入ったのは、抜けるような青空が広がる秋の朝のことでした。その家は十数年前から少しずつゴミが溢れ出し、ここ数年は門扉を越えて公道にまでペットボトルや空き缶が散乱している状態でした。夏場になれば、窓を開けることすらためらわれるほどの異臭が漂い、どこからともなく湧いてくる害虫に家族全員が頭を抱えていました。町内会を通じて何度も役所に相談に行きましたが、返ってくるのは「居住者の同意が得られない」「個人の所有物なので勝手に処分できない」という慎重な回答ばかり。私たちは半ば諦めかけていましたが、ようやく自治体が新しい条例を施行し、行政代執行が決まったと聞いたときは、近隣住民で手を取り合って喜んだものです。当日の朝、家の前には数台のパトカーとトラック、そしてテレビカメラを抱えた報道陣が集まり、異様な熱気に包まれていました。役所の職員が拡声器で執行の宣言を読み上げる声が響き渡り、いよいよ作業が始まりました。十数人の作業員が家の中から運び出すのは、黒ずんだゴミ袋や朽ち果てた家具、そして正体のわからない堆積物の山です。重機がアームを動かすたびに、周辺には長年蓄積された埃と鼻を突く腐敗臭が舞い上がり、私たちは慌てて家中の窓を閉め切りました。作業は三日間に及び、最終的にはトラック数十台分のゴミが運び出されました。夕暮れ時、すべての作業が終わり、十数年ぶりにその家の外壁があらわになったとき、私は安堵とともに、何とも言えない寂しさを感じました。ゴミがなくなった後の家は、あまりにも古びていて、そこに住んでいた老人の孤独をそのまま形にしたように見えたからです。行政代執行によって私たちの平穏な生活は取り戻されましたが、それは同時に、一人の人間が地域から完全に拒絶され、力ずくでその城を壊された瞬間でもありました。この日の出来事は、私たちに公衆衛生の重要性を教えると同時に、孤立という病がいかに深く、そして残酷な結末を迎えるかを鮮明に印象付けたのです。