不動産投資を行い、複数のアパートを経営している私にとって、入居者によるゴミ屋敷化は経営の屋台骨を揺るがす死活問題です。近年、家賃保証会社の普及により家賃滞納のリスクは軽減されましたが、部屋をゴミ屋敷にされるリスクについては、依然としてオーナーがその多くを背負わなければならないのが現状です。ある時、数年間入居していた店借人が退去した後の部屋に入り、私は言葉を失いました。床が見えないのは当然として、キッチンや風呂場は泥のような汚れとカビで埋め尽くされ、異臭は壁紙の奥まで染み付いていました。特殊清掃業者に見積もりを依頼したところ、清掃と原状回復だけで百万円を優に超える金額が提示されました。さらに深刻なのは、ゴミ屋敷化が原因で他の優良な入居者が退去してしまうことです。悪臭や害虫の被害は建物全体に広がり、物件の評判は著しく低下します。一度ゴミ屋敷として認知された物件の価値を元に戻すには、多大な労力と時間が必要です。法的にも、強制的に片付けを命じるには非常に高い壁があり、裁判費用や弁護士費用を考えると、オーナー側が泣き寝入りするケースが後を絶ちません。入居審査をどれほど厳格にしても、入居後の生活環境の変化や精神的な不調を予測することは不可能です。現状の賃貸市場では、オーナーは常にこの目に見えない時限爆弾を抱えて経営を続けているようなものです。ゴミ屋敷問題を防ぐためには、管理会社による定期的な巡回や、入居者との細かなコミュニケーションが不可欠ですが、プライバシー意識の高まりがそれさえも困難にしています。行政によるゴミ屋敷条例の整備が進みつつあるとはいえ、民間の賃貸物件におけるトラブル解決には、まだ多くの課題が残されています。しかし、条例ができたからといって、すぐにゴミがなくなるわけではありません。代執行に至るまでには、数ヶ月、時には数年にわたる説得と指導、法的な準備が必要です。また、代執行にかかる多額の費用は原則として本人に請求されますが、支払い能力がないことがほとんどであり、最終的には税金が投入されることになります。このことへの市民の理解を得ることも容易ではありません。賃貸経営というビジネスの裏側で、ゴミ屋敷がいかに大きな経済的・精神的損失をもたらしているか、その過酷な現状を社会全体が理解する必要があります。