ゴミ屋敷の状態にあるマンションを売却しようとする際、所有者が直面するのは、想像を絶するほど厳しい不動産市場の現実です。たとえ清掃を行って見た目を綺麗にしたとしても、かつてそこがゴミ屋敷であったという事実は、不動産取引における「心理的瑕疵」や「周辺環境の瑕疵」として扱われることがあります。不動産業界の現状として、近隣住民や管理会社の間で有名なゴミ屋敷であった物件は、その噂が広まっているため、買い主が見つかりにくいという致命的な欠陥を抱えることになります。査定額への影響は、通常の相場から二割から三割、ひどい場合には半値近くまで下落することもあります。なぜなら、買い主にとっては「一度そこまで不衛生になった部屋に住みたくない」という感情的な拒絶に加え、「構造部分へのダメージはないか」「壁の裏側に害虫の卵が残っていないか」「臭いが再発しないか」といった、将来的なリスクに対する不安が強く働くからです。売却を有利に進めるためには、単なるゴミの撤去だけでなく、スケルトン状態(内装をすべて剥がし、コンクリートの構造体だけにする状態)まで解体し、フルリフォームを行うことが推奨されます。このリフォーム費用だけで、平米あたり十五万円から二十万円、七十平米の部屋なら一千万円以上の投資が必要になることもあります。この費用をかけてようやく、通常の物件と同じ土俵に立てるのです。もし、リフォーム費用を惜しんでゴミ屋敷のまま、あるいは簡易的な清掃だけで売りに出そうとすれば、買い主は投資家や買取業者に限定されます。彼らはリスクを織り込んで極めて安価な価格を提示してきます。さらに、マンションの他の住戸にとっても、一室がゴミ屋敷であることは大きなマイナス要因です。マンション全体の資産価値を守るために、管理組合が法的手段を講じてでも早期解決を急ぐのは、一室の汚れが建物全体のイメージダウンに直結するからです。ゴミ屋敷を作ってしまったことの代償は、清掃業者に支払う数十万円だけではありません。一生かけて支払ってきた住宅ローンの資産価値が、自分の手によって数千万円単位で毀損されてしまうという、取り返しのつかない経済的損失が待っているのです。マンションという共同資産を所有している自覚を持ち、早い段階で周囲に助けを求める勇気が、最終的には自分自身の財産を守ることに繋がるのです。
マンション売却時の大きな障壁となるゴミ屋敷の「心理的瑕疵」と査定額への影響