ゴミ屋敷において、ハエの問題が一度発生すると、なぜこれほどまでに「消えない」のでしょうか。その背景には、ハエの驚異的な繁殖力と生命力、そしてゴミ屋敷という環境が持つ特殊性が深く関係しています。まず、ハエの「繁殖力の高さ」は驚くべきものです。メスのハエは、一度に数百個の卵を産み付け、それが数日後には幼虫(ウジ)となり、さらに数日でサナギを経て成虫へと成長します。このライフサイクルは非常に短く、適切な環境があれば、一匹のハエからあっという間に数万匹、数十万匹へと個体数を増やしていきます。ゴミ屋敷には、ハエが卵を産み付け、幼虫が育つための湿った有機物や腐敗物が豊富に存在するため、まさにハエの「無限の繁殖工場」となってしまうのです。次に、「隠れ場所の多さ」も、ハエが消えない大きな理由です。ゴミの山は、ハエにとって無数の隠れ場所を提供します。殺虫剤を散布しても、ゴミの隙間に隠れて生き延びる個体が多く、完全に駆除することが非常に困難です。また、ゴミの奥深くで幼虫やサナギが育っているため、成虫だけを駆除しても、すぐに次の世代が羽化してきます。さらに、「外部からの侵入」も無視できません。ゴミ屋敷の悪臭は、近隣のハエをも引き寄せ、窓やドアの隙間から次々と侵入してきます。仮に一時的に部屋のハエを減らしたとしても、外部から新たなハエが侵入し続ける限り、問題は根本的に解決されません。そして、最も根深い問題は、「ゴミそのものがなくならない」ことです。ハエの発生源であるゴミが部屋の中から完全に撤去されない限り、ハエは常に新たな食料源と繁殖場所を見つけ出し、再び増殖を始めます。この悪循環が続く限り、ハエがゴミ屋敷から完全に消えることはないのです。ハエが消えないのは、その生命力と繁殖力に加え、ゴミ屋敷という特殊な環境が、ハエにとって最適な生存条件を提供し続けているからに他なりません。
なぜハエは消えないのか